eVTOL とは|読み方と略語の意味
eVTOL は「イーブイトール」と読みます(部品メーカーの日機装の公式メディアにもこの読みが書かれています)。もとの英語は electric Vertical Take-Off and Landing で、日本語では「電動垂直離着陸機」と訳されます(SkyDrive の FAQ)。略語を分解すると、意味がそのまま分かります。
| 文字 | 英語 | 意味 |
|---|---|---|
| e | electric | 電気を動力に使う |
| V | Vertical | 垂直に |
| TO | Take-Off | 離陸する |
| L | Landing | 着陸する |
国の文書は eVTOL を「電力を利用して垂直方向に離着陸する航空機」と説明し、従来の機体と比べて、運航時に排出ガスを出さないこと、運用コストの削減、騒音の低減といった潜在的なメリットを挙げています(空飛ぶクルマ(AAM)の運用概念 第2版、2026年3月27日)。Honda は、ヘリコプターのように垂直に離着陸するため滑走路などの大がかりな設備が要らないと説明しています(Honda の技術解説)。
「空飛ぶクルマ」と eVTOL は同じものか
ほぼ同じ意味で使われますが、厳密には言葉の範囲が違います。SkyDrive は eVTOL を「空飛ぶクルマの技術的な呼び名」と説明しています。国の文書では、「空飛ぶクルマ(AAM)」は機体、離着陸場、交通管理まで含む空の移動の全体を指し、eVTOL はそこで使う機体の種類です。国の文書には「AAM に用いられる eVTOL」という書き方が出てきます。
「空飛ぶクルマ」という言葉の定義や、ヘリコプターやドローンとの違いは空飛ぶクルマとはで解説しています。この記事では、機体の技術に絞って説明します。
「e」が付いていてもエンジンを積む機体がある
意外に感じるかもしれませんが、eVTOL の中にはエンジンを積むものもあります。Honda のように、ガスタービンで発電してモーターを回す「ハイブリッド eVTOL」です。プロペラを回すのは電気のモーターなので、Honda はこれも eVTOL と呼んでいます。国の文書でも、最初に商用運航を始める可能性が最も高いのは充電式バッテリーの eVTOL としつつ、ハイブリッド型が導入される可能性にも触れています。
eVTOL の仕組み|分散電気推進とは
eVTOL の技術の中心は、電気で動く小さな推進装置を機体のあちこちに分けて置く考え方です。一般に「分散電気推進」と呼ばれます。ヘリコプターが基本的に1つの大きなメインローターに頼るのに対して、複数のモーターとローターに役割を分けます(SkyDrive の機体ページ)。
電気の流れは次のようになります。国の文書や各社の説明、募集要項に出てくる部品を順番に並べました。
- 電池:電気をためます。ハイブリッドの場合は、ここに発電機が加わります。
- インバーター:電池の直流を、モーターを細かく制御できる形の電気に変えます。SkyDrive の募集要項は、インバーターを電動推進システムの中核部品(英語の原文 "a core component of the electric propulsion system" を編集部が訳したもの)と位置づけています。
- モーター:回転の力を作ります。
- ローターやプロペラ:回転の力を、機体を持ち上げる力や前に進む力に変えます。
- 飛行制御コンピューター:操縦者の操作と機体の状態から、各モーターの回転を指示します。
マルチローター型では、舵のような動く部分を使わず、複数のモーターの回転速度を変えることで機体の姿勢を変えて進みます(運用概念 第2版)。Joby の機体は操縦装置と機体を電気信号でつなぐフライ・バイ・ワイヤ方式です(Joby の技術ページ)。
なぜモーターを増やすのか|冗長性という考え方
一番の理由は「どこかが壊れても飛び続ける」ためです。これを冗長性と言います。国の文書も、複数のモーターとローターを備えることで高い冗長性が期待されると書いています。公式に公表されている3社の構成を比べると、電源や制御まで分けていることが分かります。
| 機体 | 推進 | 飛行制御 | 電池 |
|---|---|---|---|
| SKYDRIVE SD-05型 | 12基のモーター・ローターを独立して制御 | 3系統+独立したバックアップ(3+1構成) | 4系統に分割 |
| Joby S4 | 6基の傾く電動プロペラ(各5枚羽根) | 三重の飛行コンピューター | 4パック |
| Honda eVTOL | 垂直離着陸用8つ+推進用2つのローター | 公表の記述を確認できず | ガスタービン発電とバッテリーの組み合わせ |
出典: SkyDrive、Joby、Honda、Honda のハイブリッド解説。各社の説明で、同じ条件で比べた試験の結果ではありません。
モーターが多いことで、国の決まりも変わりました。これまで、多発機で2基以上の発動機が止まることは「事故が発生するおそれがある事態」(重大インシデント)に当たりました。しかし空飛ぶクルマでは、止まった数や位置によっては必ずしもそうとは言えません。そこで国は、「国土交通大臣が定める数以上の発動機の停止等」を基準に改正し、当初は一律2基としつつ、型式ごとの設計が明らかになった段階で型式ごとの数を決めることにしました(制度整備の概要)。
ヘリの常識が通用しない部分
eVTOL の設計が従来の航空機と違うため、国は基準の作り方も変えました。制度整備の概要から具体例を2つ挙げます。
- オートローテーション:ヘリコプターには、全部の発動機が止まったときに、回転翼の惰性で降りる性能が求められます。マルチローター型には、それができない設計も見込まれます。
- 失速:飛行機には失速から回復できる性能が求められますが、開発中の機体には、回復する性能の代わりに失速に至らない設計とするものも見込まれます。
そのため国は、同等の安全性を示せば別の基準を適用できるように改正しました。さらに「電動垂直離着陸機における特別要件の適用指針」を2024年3月22日から適用しています(制度整備一覧)。電池については、次の機能が求められる例として公表されています。
- 電池のセルのバランシング機能(電池の小さな単位の差をそろえる)
- 電池の充電状態の推定機能
- 電池の劣化状態の推定機能
- 制御部を含む系統全体に対する BIT 機能(自分で故障を調べる機能)
スマートフォンの電池残量が少しずれていても大きな問題にはなりませんが、飛んでいる機体では残量の推定の誤りが安全に直結します。このため電池の管理ソフトの品質が安全にかかわる、というのが編集部の見方です。
バッテリーとハイブリッド|航続距離を決める電源の選び方
eVTOL の性能を最も強く縛るのが電源です。国の文書は、現時点で使えると見込まれるバッテリーは液体燃料に比べてエネルギー密度が低く、航続距離や積める重さが制限される可能性があり、マルチローター型では特に顕著になると書いています。ロードマップの運用概念の欄を見ると、電源の変化は次の順番で想定されています。
| 時期(ロードマップ) | 機体の電源 | 技術開発の項目 |
|---|---|---|
| 2020年代後半 | 充電式バッテリーの機体(一部ハイブリッド型を含む) | リチウムイオン電池の性能向上、ガスタービンハイブリッド推進システムの開発 |
| 2030年代前半 | ハイブリッド型の本格導入、航続距離の増加 | 全固体電池など次世代バッテリーの適用、水素燃料電池推進システムの開発 |
| 2030年代後半 | 水素燃料電池搭載の機体の導入 | より広域の運航を実現する推進システムの開発 |
出典: 空の移動革命に向けたロードマップ(2026年3月27日)。
電源の方式を比べると、それぞれ次のような特徴があります。
| 方式 | 仕組み | 良い点 | 課題 |
|---|---|---|---|
| バッテリーのみ | 電池にためた電気だけで飛ぶ | 運航中に排出ガスを出さない。起動後すぐ使える可能性 | エネルギー密度の低さ、充電の時間と設備 |
| ガスタービン・ハイブリッド | ガスタービンで発電し、モーターでプロペラを回す | 航続距離を大きく延ばせる。Honda は400kmを想定 | 燃料を使う。発電機の小型・軽量化 |
| 水素燃料電池 | 水素から発電する | ロードマップでは、より長い時期の選択肢として位置づけ | 水素を利用・貯蔵する設備が必要になる可能性 |
出典: 運用概念 第2版、Honda のハイブリッド解説。
バッテリーの数字を読む
電池の性能は、重さ1kgあたりためられる電気の量(Wh/kg)で表します。SkyDrive は300Wh/kg超のエネルギー密度を開発中と公式ページに書いています(機体ページ)。ただしこれは開発中の値です。
航続距離の違いは、使い方の違いにつながります。Honda は、電池だけで飛ぶ機体の航続距離は100km前後で都市近郊のタクシー用途を想定しているのに対して、ハイブリッドの自社機体は400kmで都市間の移動までカバーすると説明しています。Honda の見方では、今後20年でも電池だけで長距離を飛ぶのは難しいと考えられています(Honda のハイブリッド解説)。これは Honda の見通しで、業界全体の結論ではありません。一方、SkyDrive は電動のまま、30km未満の都市部の短距離移動に絞る設計を選んでいます(2026年9月24日の発表)。
ハイブリッドの仕組み(Honda の例)
Honda の方式は、ガスタービンで発生した回転エネルギーを電力に変え、電動モーターでプロペラを回すものです(Honda R&D)。F1 のパワーユニットのエネルギー回生の技術を超高回転のガスタービン発電機に生かし、ハイブリッド車の開発で培ったモーターや電池のエネルギー管理の技術を eVTOL 用に最適化すると説明しています(Honda のハイブリッド解説)。
飛行の場面ごとに電気の使い方も変わります。Honda の説明では、大きな出力が要る垂直離着陸のときはガスタービン発電機とバッテリーの電力を組み合わせ、高度を確保した後の巡航では、発電した電力をバッテリーにためながらモーターを回します。ガスタービンは燃料を使うため、Honda は燃費とエネルギー管理の最適化で燃料の消費を抑え、最終的には持続可能な航空燃料(SAF)100%の使用で炭素の排出を実質なくすことを目指すとしています。
ハイブリッドが広がるかどうかは、これから決まることです。国の資料で「ハイブリッド型の本格導入」は2030年代前半の項目で、Honda 自身は FAA の型式証明の取得を2030年代に目指しています。
充電も大きな課題
飛ぶたびに充電や電池交換をすることが想定されています。国の文書によると、2030年代後半以降の高頻度の運航を考えると、方式によって充電時間や出力に大きな差が出ます。電池を交換する方式は、今の電動モビリティ向けの給電システムの水準で要求を満たせる一方、機体構造の重さが増えることが課題です。短時間の駐機で済ませるならメガワット級の充電が必要になり、高電圧と大電流への対応、冷却、安全対策の高度化が求められます。屋上に離着陸場を置くと、建物の電源の確保も問題になります。
整備の決まりにも影響します。電池の充電や交換に特別な知識が要らない設計も考えられるため、充電や交換の作業区分は型式ごとに決めることになっています(制度整備の概要)。eVTOL の再充電を担当する人は必要な訓練を受ける必要があると国の文書にあり、機体だけでなく地上の仕事にも関わってきます。
空飛ぶクルマの求人をチェック
求人一覧を見るeVTOL の型の比較|翼があるかどうかで何が変わるか
国の文書は eVTOL を3つの型に分けています。技術の面で見ると、一番の分かれ目は「翼で浮くか、ローターだけで浮くか」です。
| 型 | 構成 | 巡航時の揚力 | 国の文書が示す特徴 | 公式の説明で確かめられる例 |
|---|---|---|---|---|
| マルチローター | 3つ以上の電動回転翼 | 回転翼 | 巡航時の電池の消耗が激しく、短距離向き | SKYDRIVE SD-05型 |
| リフト・クルーズ | 上向きのローター+前向きのプロペラ+固定翼 | 固定翼 | 巡航時の効率が高く、長距離向き | Honda eVTOL |
| ベクタードスラスト | 傾く推進装置+固定翼 | 固定翼 | より高い巡航速度と距離の可能性 | Joby S4(傾く6基のプロペラと固定翼。当てはめは編集部) |
翼がある型には巡航の効率という強みがあり、翼がない型には構造の簡単さと、狭い場所での扱いやすさという強みがあります。SkyDrive の機体設計コンセプトは、この綱引きを「前進飛行性能」と「垂直飛行性能」の両立の難しさとして説明しています。同社の説明では、高いディスクローディング(ローターの面積あたりにかかる重さ)の機体は、離陸時に大きなパワーが要るため推進システムが重くなり、その不利益は巡航中も残ります。同社は、30km未満の都市部の短距離移動ではそのメリットは限られる一方、50kmを超える地域間移動では固定翼が優れるとしています(発表)。機体を選んだ会社の立場からの説明なので、翼のある機体を作る会社には別の考え方があります。Honda はハイブリッドとの組み合わせで長距離に向け、Joby は高速の巡航に向けています。
航空法の分類も変わります。翼で主な揚力を得る型は当面「飛行機」、回転翼で揚力と推進力を得る型は「回転翼航空機」と整理されます。飛行視程の決まりなど、分類によって適用される基準が変わるものがあります。
主な機体の仕様の表(公式の数字だけ)
確かめられた公式の数字だけを並べました。各社の発表の時点が違い、開発中の値を含みます。空欄をなくすために推測で埋めることはしていません。順番に意味はありません。
| 項目 | SKYDRIVE SD-05型 | Joby S4 | Midnight(Archer) | Honda eVTOL |
|---|---|---|---|---|
| 乗れる人数 | 3名(操縦士1+乗客2) | 5名(操縦士1+乗客4) | 5名(旅客4+パイロット1) | 乗客4名以上+パイロット1名を想定 |
| 型 | マルチローター | 傾くプロペラ+固定翼 | 固定翼あり(全幅=翼長 約15m) | リフト&クルーズ |
| 推進 | 12基のモーター・ローター | 6基の電動ティルトプロペラ | 確認できず | 8+2のローター |
| 動力 | バッテリー | リチウムイオンポリマー電池 4パック | 電動(Soracle の説明では eVTOL) | ガスタービン・ハイブリッド |
| 速度 | 最大巡航 100km/h | 最高 320km/h(公式は最大200mph) | 最高 240km/h | 確認できず |
| 航続距離 | 15〜40km | 160km | 160km | 最大 400km を想定 |
| 最大重量 | 最大離陸重量 1,400kg | 最大 2,400kg | 最大積載量 454kg(離陸重量は確認できず) | 確認できず |
| 大きさ | 約11.5m×約11.3m×約3m | 確認できず | 全長 約10m、全幅 約15m、全高 約4m | 確認できず |
| 騒音(各社の公表) | 高度150m飛行時に約65dB | 巡航時500m先で45dBA、着陸時100m先で65dBA | 確認できず | 確認できず |
| 出典 | 公式の機体ページ | 公式の技術ページ、ANAホールディングスの資料 | Soracle の発表(2026-08-21) | Honda R&D、技術解説 |
確認日は2026年11月3日。Joby の航続距離は ANAホールディングスの資料(2025年10月30日)によります。騒音は測定の条件が違うため、機体どうしの比較には使えません。
ほかにも、大阪・関西万博で飛んだ1人乗りの HEXA(丸紅によれば、18個のプロペラ・モーターを備え、飛行時間 約10〜15分)、操縦者が乗らない方式の EH216-S(EHang の公表で最大離陸重量 620kg、最大設計速度 130km/h、航続距離 30km)があります(丸紅の発表、EHang の公式ページ)。
型式証明の状況|どこまで進んでいるか(2026年11月3日に確かめた範囲)
型式証明は、機体の設計が国の安全基準を満たすと航空当局が認める制度です。運航する国や地域の当局の認証が必要で、日本は国土交通省航空局(JCAB)、米国は連邦航空局(FAA)、欧州は EU 航空安全機関(EASA)が審査します(SkyDrive の FAQ)。各社が公式に発表している状況を、日付つきで並べます。
| 機体 | 当局 | 発表の内容 | 日付 |
|---|---|---|---|
| SKYDRIVE SD-05型 | JCAB・FAA | 日米の当局に対する証明活動を同時に進めると説明。JCAB を通じて FAA に申請し2024年4月29日に受理。2026年7月に FAA との機体概要説明会を開始 | 2024-06-14・2026-07-16 |
| Joby S4 | FAA | 5段階のうち最後の段階で「これまでで最も進んだ四半期」 | 2026-08-05 |
| Joby S4 | JCAB | FAA の型式証明を日本で有効にする手続きを申請 | 2022-10-18 |
| Midnight | FAA | 4段階の手続きの第3段階を閉じ、第4段階を進めていると発表 | 2026-05-11 |
| Midnight | JCAB | 型式証明の申請が受理され、審査の手続きが開始 | 2026-08-21 |
| Honda eVTOL | FAA | 2030年代の取得を目指す。2026年4月1日に検証機で飛行試験を開始 | 公式ページ |
| EH216-S | 中国民用航空局 | 2023年10月に型式証明、2024年3月に生産の証明、2025年3月に運航会社が最初の運航許可 | 公式ページ |
この表で注意したいのは次の点です。
- 段階の数え方は会社によって違います。Joby は5段階、Archer は4段階と説明しており、「何段階目か」で進み具合を比べることはできません。
- 新しい発表が出ている可能性があります。Archer については2026年第2四半期の発表本文を確かめられなかったため、確かめられた最新の日付で書いています。
- 日本での取得はまだ確かめられません。日本で空飛ぶクルマの型式証明が取得されたという発表は、確かめた範囲では見つかりませんでした。
運航の開始は証明だけでは決まりません。国の文書は、認証済みの機体に加えて、航空運送事業を行う会社は事業の許可や規程類の認可・承認の取得が必要だと書いています。時期の全体像は空飛ぶクルマはいつ実用化されるのかをご覧ください。
eVTOL の技術の課題
国の文書とロードマップに挙げられている技術の課題を、分野ごとに整理します。
| 分野 | 何が難しいのか | ロードマップ・国の文書での項目 |
|---|---|---|
| 電池 | エネルギー密度と寿命 | 容量エネルギー密度、サイクル寿命の向上。全固体電池など次世代電池の適用 |
| モーター | 軽く、強く、熱に耐える | 出力密度、耐久性、冷却性能の向上 |
| 騒音 | 音の高さや、身近な場所を飛ぶことによる新しい問題 | ローターの高い周波数の音、都市計画や飛行ルートでの緩和 |
| 天候 | 当初は有視界飛行(VFR)を想定。悪天候での飛行が次の段階 | 低視程運航による就航率の向上 |
| 自動化 | 機上のセンサーで周りを検知し、衝突を避ける | 操縦機能の自動化、衝突防止システムの装備品の開発 |
| 遠隔操縦 | 通信の遅れと切断を許されない | 冗長で低遅延の C2 リンク(機体を操る通信) |
| セキュリティ | 通信や情報の乗っ取りを防ぐ | 通信の暗号化、リプレイ攻撃への対策など |
| 量産 | 航空機の品質で数を作る | サプライチェーンの構築、自動車産業などの技術を生かした高レート生産 |
出典: 運用概念 第2版、ロードマップ2026。
量産の動きとしては、SkyDrive がスズキと資本業務提携し、年間最大100機の製造が可能なスズキグループの工場が稼働していると説明しています(機体ページ)。2026年7月には量産機の部品の製造パートナーとの提携も相次いで発表しました(SkyDrive のニュース)。自動の領域では、Joby が2026年9月に、自動飛行の技術を載せた機体で米国を横断する飛行を完了したと発表しました。ただし使ったのは eVTOL ではなく別の機体(J208)で、安全のための操縦士も乗っていました(Joby の発表)。
国の文書は自動化のレベルを人間と機械の役割で6段階(レベル0〜5)に定義し、全部の段階を飛び越えるのではなく段階的に導入されると見ています。自動化が進むと、安全の向上だけでなく、運航の密度を高めることや、少ない人数で多くの機体を見ることにもつながると期待されています。
eVTOL の開発でどんな技術者が要るのか
ここまで見てきた技術は、1人や1分野では作れません。公式の募集要項を見ると、航空機の経験だけでなく、自動車やパワーエレクトロニクスの経験を歓迎する募集もあります。掲載中の求人から、分野の例と、募集要項に書かれている仕事を整理しました。
| 分野 | どんな仕事か | 募集要項に出てくる具体 |
|---|---|---|
| パワーエレクトロニクス | 電源、モーター、インバーターの開発 | 高電圧回路、インバーター、コンバーターの設計経験を求める募集あり |
| EMI/EMC(電磁ノイズ) | 電子機器がお互いに悪影響を与えないようにする | 自動車や車載電子機器、産業機器の経験も対象とする募集あり |
| 耐雷 | 雷の対策の設計・試験・認証 | SAE ARP 5412/5414、RTCA DO-160 などの規格の知識 |
| ローター | 回転翼の設計から認証まで | Part 35・Part 27/29 の認証の経験を求める募集あり |
| アビオニクス | 表示装置など機上の電子機器の設計・統合・認証 | ATA の章で分野を示した実務の経験 |
| 構造 | 複合材と金属の機体の強度と耐久性の試験と認証 | 型式証明に向けた構造試験の計画 |
| 飛行制御 | 機体の姿勢や動きを決める制御の設計レビューと検証 | 制御の要求仕様に沿った評価項目・試験項目の計画 |
| 自律飛行 | 高度な自律飛行に向けた機体の認識システムの研究 | Honda の要素技術研究の募集 |
2026年11月5日時点で掲載中の求人の募集要項から編集部が整理しました。募集は変わることがあります。応募条件は各求人の原文でご確認ください。
当サイトの掲載では、機体の開発・設計・解析が39件、型式証明・試験・品質が14件、製造・生産技術が7件、ソフトウェア・ITが6件です。全体の職種別の内訳と、公表された年収の集計は次の表のとおりです。
職種ごとの件数と公表された年収の表は空飛ぶクルマの仕事と職種にまとめています。2026年11月5日時点で掲載中の求人は100件で、そのうち機体の開発・設計・解析は39件です。
機体の開発・設計・解析の求人の一部は次のとおりです。
募集の一覧は機体の開発・設計・解析の求人で読めます。
eVTOL は、航空機の認証の世界に、電動車やロボットの技術を持ち込む分野です。すべての募集で同じではありませんが、自動車の電動化の経験がある人にも入り口が見つかる可能性があります。職種の全体は空飛ぶクルマの仕事と職種、最新の募集は機体の開発・設計・解析の求人をご覧ください。
出典
この記事で使った一次資料です。確認日はいずれも2026年11月3日です。
- 空の移動革命に向けた官民協議会「空飛ぶクルマ(AAM)の運用概念 第2版」(2026年3月27日)
- 空の移動革命に向けた官民協議会「空の移動革命に向けたロードマップ」(2026年3月27日)
- 国土交通省「空飛ぶクルマに関する制度整備の概要」(2024年4月23日)、制度整備一覧(2024年4月23日)
- Honda「eVTOL 技術解説」、Honda「eVTOL ガスタービンハイブリッドシステム」、Honda R&D「Hybrid eVTOL」
- SkyDrive「FAQ」、機体ページ、ニュース一覧、機体設計コンセプト(2026年9月24日)、FAA の型式証明申請の受理(2024年6月14日)、米国での型式証明活動(2026年7月16日)
- Joby Aviation「Technology」、Second Quarter 2026 Financial Results(2026年8月5日)、Joby Applies for Japan Aircraft Certification(2022年10月18日)、Autonomous Flight Across the United States(2026年9月18日)
- ANAホールディングス 2026年3月期第2四半期決算 説明会資料(2025年10月30日)
- Soracle「Midnight の型式証明申請」(2026年8月21日)
- Archer Announces First Quarter 2026 Results(2026年5月11日)
- 丸紅「デモフライト中の機体損傷について」(2025年5月1日)
- EHang「EH216-S」、EHang「Airworthiness」
- 日機装 Bright「eVTOL の基礎知識」(読み方のみ)
各社の数字は各社が公表したもので、当サイトが確かめた測定ではありません。将来の時期は各社や国の目標で、確定した予定ではありません。




